海に道が、、、

有明海に浮かぶ高杢島(たかもくじま)

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時間がたつと、

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手前の島(樋合島)陸続きに。

この海の道をたどって島に渡ってふりかえると

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こんな感じで、けっこう幅の広い道が出現します。

旧約聖書の出エジプト記で、迫害されたイスラエルの民を率いたモーセがエジプト軍に追われたときに「海が割れた」という話が思い出されます。

この海の道を渡った先の高杢島は昔の小火山で、神社の鳥居をすぎて先に進むともう一つ鳥居があって、頂上まで道が通じていて、歩いて15分ほどです。

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島に咲いていたサボテンの花

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ドライブレコーダーの不具合と解決策

車に後づけのドライブレコーダーに不具合が生じ、それが解決できたので、また同じ症状が出てきたときのための備忘としてメモしておく。

製品はユピテルのカメラ一体型ドライブレコーダー DRY-1000c。

これは以前につけていた同社のDRY-FH200が昨年秋にリコールされたため、代替品として送られてきたもの。

取り付けてから今年の3月ころまでは問題なく動作していたが、マイクロSDカードを新品に交換したところ、不具合が生じるようになった。

症状:
1. 画面が上下さかさま
2. 日本語が消えて説明の表示がすべて英語
3. 始動するたびに「SDカードがないので挿入するように」
 というエラーが表示されて録画されない。

1の「画面が上下さかさま」は、再生の必要ができたときにパソコンなどの再生する側のソフトで上下反転(90度×2=180度回転)させてやればよい(Windows付属のムービーメーカーなどでも簡単にできる)ので、実際的な支障はない。

2の「英語表示」は、上下逆ということはスペルも左右逆に読まなければならないので面倒だが、最初の設定をのぞけば、実際の運転でいじることはほとんどないので、これも問題なし。

実質的な問題点は、3の「始動するたびに(マイクロ)SDカードがありません」とエラーが出て録画されないやつ。

これはSDカードをいったん引き出して挿入しなおすと解消された。

が、車に乗ってエンジンをかけるたびにこれを強いられるのは結構うっとうしい。

というわけで、対策を探してみた。

説明書に書いてある「リセット」「初期化」では症状は解消されなかった。

ネットを検索すると、この製品に特有のエラーのようだが、具体的な解決策は書いてない(というか、ネットに出ている程度のことはやってみたが駄目だった)。

メーカーに照会したら交換してもらえたという書き込みがあったので、メーカーの照会用番号に電話してみると、説明書には記載されていないものの「工場出荷状態に戻せば解消します」ということで、電話で手順を教えてもらった。メーカーとしても問題が続いてQ&Aのデータ蓄積できてきていたのだろう。「ああ、その件ね」という感じで、さっと説明してもらい、その通りにしたら解消した。

というわけで、前置きが長くなったが、以下に「工場出荷状態に戻す」手順を忘れないようにメモしておく。

1 製品の電源を入れる(車でキーを入れてエンジンを始動させる)

2 [ OK ] を押してメニューを表示させ、一番上(反転しているので一番下)の端にある [ 歯車のアイコン] を選択して OK を押す。

[選択肢の移動は▲▼マークだったかな]

3 ページを 1/2、2/2 と移動し

4 [ リセット ] をOKする。

5 [ プロテクト ]しますかについては  NO を選択し、OKする。

以上で、めでたく復旧。

確定申告 (eTax) 終了

今年の確定申告が終了。
eTax なので、税務署まで出向かず、自宅でできるので以前に比べると楽といえば楽ではありますね。
具体的な作業でむずかしいところはないのだけれど、年に一回のため手順を忘れていたりするので、備忘録代わりにこちらにメモを残しておきます。

一番のハードルは識別番号やパスワード/暗証番号の入力が多いこと。
・eTax 利用者識別番号(16桁)税務署からのハガキに書いてある。
・ログインするためのパスワード(以前に登録したやつ 思い出せない (^^; )

・本人確認のためのマイナンバーカードの番号
・その暗証番号(カードを発行してもらうときに市役所に登録したやつ 思い出せない (^^;)

・それから、まずパソコンにインストールしてある eTax 専用ソフトを更新して使うための納税要確認番号
これなんか、2009年に登録したやつで、覚えているわけがない。

通常の4桁のパスワード/暗証番号とは違って、電子申告用のものは桁数が多いので、まったくわからない (^^;

というわけで、ファイルキャビネットを探しまくって紙の書類を引っ張りだし、なんとかセーフ。

一般的なアプリやサイトの登録では、パスワードを忘れたらメールで再発行/変更が一般的だけど、再発行を紙の種類で申請する必要があるものもあるため、申告期限ぎりぎりだったりすると、電子申告するより紙の申告用紙を印刷して届けた方が早いこともある。


写真は、電子申告に必要なナンバーカードとカードリーダー。ナンバーカードは昨年発行のもので、カードリーダーは2代目。

熊本地震から一カ月

地震のような災害が起きると、日常生活は激変するし、ワーク・ライフ・バランスなんて横文字のライフスタイルも簡単に崩れてしまう──のではあるけれど、実際にいろいろ経験してみると、人間というものはけっこう粘り強く生きていけるものだとも思う。

四月十四日の夜に一時間ほどの散歩から戻ってきて玄関に入ったところで、スマホの地震警報が鳴り、その直後(数秒後)に大きな揺れがきた。ゆっくりした横揺れ。

熊本で震度七ということで驚いたが、自宅付近は震度五弱で被害なし。この時点ではあまり深刻な感じは持っていなかった。

十五日の深夜──正確には十六日未明の本震で、状況が一変した。震源地付近の大きな被害の多くはこの二度目の地震で発生した──という印象。

四月末には寝袋持参で熊本市や益城町、熊本空港にも行ってみたが、一見して問題なさそうな住宅でも中に入ると家具や物が散乱し、目も当てられない。正直、家具の固定なんて対策として本当に効果あるのかなと思うほど、、、

大型連休後はボランティアも減り、絵になる被害の大きいところを競って取り上げていたメディアの報道も少しずつ地に足をつけてきたものになってきているので、そろそろ一過性ではない日常生活の情報発信の出番かなと思う。

自分について言えば、日常生活は地震前と同じでほとんど変化はない。しいてあげれば、寝室の家具の固定方法を見直しているくらい、、、

地震の直接的な影響はかなり局地的で、震源地から少し離れたところでは、ふだん通りの日常が続いている──という報告をここで少しだけ、、、

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こちらは地震後も例年通り庭に咲いている花菖蒲(たぶん。アヤメではないと思う)。
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小さな島と小舟のある風景も同じ(五月)。

こちらは大型連休中に逍遥jr.での海上散歩で見た風景。
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春の海 ひねもすのたりのたりかな(蕪村)

海は天候しだいで天国にもなれば地獄にもなるが、この日は限りなく天国に近かった。変わったことと言えば、今年の四月初めにザトウクジラの子が定置網にかかったのが、このあたり。

観光の柱の一つがイルカウォッチングになっているところなので、小さなクジラの目撃情報もあるが、ザトウクジラが迷いこむのは珍しい。
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こちらは久しぶりにやったボウリングのスコア
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五ゲームの予定で、一、二ゲームを練習、三ゲーム目から本番……のつもりが、終盤に指の握力がなくなりボールを落とし気味になったので無理をせず三ゲームで終了。スコアはこんなもの。

新刊紹介『コナン・ドイルの海洋ミステリーI』

新刊の紹介。
『コナン・ドイルの海洋ミステリーI[』(コナン・ドイル著、明瀬和弘訳、エイティエル出版)
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内容について、「はじめに」から引用。
名探偵シャーロック・ホームズの生みの親、コナン・ドイルの本業は医者で、患者が少なくて暇な時間に小説を書きはじめたという話はよく知られている。
彼はホームズ物以外にもさまざまな分野の小説を書いているのだが、その作品群は生前にテーマ別に整理され、ダーウィンの『種の起源』を出版したことでも知られるマレー社から刊行された。本書に収録した短編はそのうちの『海賊と青海原の物語』と題する一巻で「青海原」に分類されている六編である。幕末の横浜が舞台になっている作品も含まれていて見逃せない。
船乗りだったという説もあるシェークスピアの『テンペスト』を持ち出すまでもなく、英国の海洋文学は質量ともにきわめて豊富だが、ドイルの海洋ものもその伝統に恥じない。
それというのも、コナン・ドイルは医大生のときにアルバイトを兼ねて北大西洋の捕鯨船、卒業直後に西アフリカ航路の貨物船と、二度の長期航海に船医として乗りこんでおり、彼の海にまつわる話は、本で読んだだけの生半可な知識によるのではなく、実体験に裏打ちされているからである。
本書に収録した六編にホームズのような名探偵は登場しないが、いずれもミステリー仕立てになっているところは、いかにもコナン・ドイルらしい。
原著はコナン・ドイルの生前にさまざまな領域の作品をテーマ別に整理して刊行された10巻本の1つ Tales of Pirates and Blue Water からブルーウォーター編の6作。
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縞模様の宝物箱
ポールスター号の船長
樽工場の悪魔
ジェランドの航海
J・ハバクク・ジェフソンの陳述書
あの小さな四角い箱
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4番目の「ジェランドの航海」の舞台が幕末の横浜になっている。
貿易商の番頭が主人が江戸にいて不在なのをいいことに、会社の金をバクチで損した分の穴埋めに流用し、それがばれそうになったので、ヨットを買って太平洋を横断してアメリカまで逃げていこう……
という事件の顛末を描いた話(ネタバレにならないよう、これ以上は言わない)。
で、問題はこれが明治維新前の横浜だってことで、商売に来ている西洋人たちが港に自分用のヨットを持って楽しんでいたというのだが、こういうのって歴史の教科書では取り上げてくれない。
『日本ヨット史―文久元年~昭和20年』(白崎謙太郎著、舵社、昭和63年刊)によれば、
historyofyachtinjapan
横浜は日本のヨット発祥の地で、江戸時代末の浮世絵にもヨットらしいものが描かれているらしい。
使われたヨットはヨール(2本マストで後ろのミズンマストが低い。ケッチに似ているが、マストの位置が船尾(舵軸の後ろ))で、これは口絵に使われている百年以上前の明治時代の写真。ヨールは後ろのゴールデンハウンド号。
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こんな感じのヨットだったと思われる。
吉田松陰なんかが黒船に乗り込もうとした頃からほんの十年ほど後にすぎないのに、もうこんなヨットが浮かぶようになっていた(ドイルによる創作だけど、史実とそれほどの違いはなさそう)わけで、あの頃というのは本当に激動の時代だったんだなとあらためてわかる。

阪神淡路大震災

1月17日は阪神淡路大震災から二十年になる。
直接体験したわけではないが、人生、いつ、どこで、どうなるかわからないということを改めて感じさせられたわけで、それをきっかけに本気でフリーランスで生きることを目指し、数年後に完全なフリーランスの翻訳者になった。
それからさらに二十年経ち、母親の入退院、死亡と、それとほぼ時期を同じくして生じた身体の不調(いまはほぼ回復したが)をきっかけに、業務内容を少し変えることにした。つまり、残りの人生は、同じ翻訳でも食べるための翻訳(契約書などの法律関連の文書の英訳・和訳)から書籍の翻訳(出したい本の翻訳、出したい/出すべき本の出版)へと切り替えることにした。
まだ舵を切ったばかりで、海のものとも山のものともわからないが、「…をしておけばよかった」という後悔だけはしたくない――というわけで、海に浮かぶオフィスもその一歩ということになる。
海に浮かぶオフィス

老水夫行

サミュエル・テイラー・コールリッジの傑作長編詩『老水夫行』の新訳を、海洋冒険文庫シリーズの1冊としてアマゾン Kindle版で刊行(訳者として本名を使用)。
(他の電子ブックフォーマットにも順次対応予定)
ancient mariner
以下は、「まえがき」の引用
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 『老水夫行(The Rime of the Ancient Mariner)』は、十八世紀後半のイングランドに生まれ、産業革命の時代を生きたサミュエル・テイラー・コールリッジ(Samuel Taylor Coleridge)の幻想的な長編詩である。
 英詩として最も有名な作品の一つであるものの、「誰もが知っているが実際に読み通した人はほとんどいない」という典型例でもある。これは、すでに古典となった名作が共通してたどる宿命なのかもしれない。日本でも『源氏物語』を知らない人はいないだろうが、あの五十四帖すべてを読み通した人がほとんどいないのと同じだ。
 学校の授業で、辞書を引き引き、文法や解釈で先生に叱られつつ、重箱の隅をつつくような「鑑賞」をやった作品を、もう一度、読んでみようという気にならないのも当然ではある。
 とはいえ、源氏物語についても多くの作家が現代語訳に何度も取り組んでいるように、古典には現代にも通じるものがあり、読んだ者がそれを人に語らずにはいられない魅力(魔力?)があるのも事実である。だから古典として生き残っているわけだし、これを神棚に祭り上げてしまって素通りするのはもったいない。
  この長詩に出てくる罪と罰を象徴するアホウドリや幽霊船のイメージは、現代にも広く浸透している。詩に出てくる船も船乗りも海賊とは直接の関係はないのだが、この幽霊船のイメージは、製作側が意識するにしろ無意識であったにしろ、ディズニー映画の『パイレーツ・オブ・カリビアン』やアニメの『ワンピース』にも通じているところがある。
 というより、その根底にある生と死、罪と罰、呪いと復讐、魂の叫びと救済には共通したものがある、とさえ言える。
 酒の席の潤滑油たる雑学ないしトリビアとして言うと、コールリッジの同時代人だったシェリー夫人が書いた『フランケンシュタイン』にも、この老水夫が引用されている。自分は霧と雪の国へ行くが、コールリッジの老水夫のようにアホウドリを殺したりはしないので心配しないように、といった風に。
 訳者個人としては、この『老水夫行』は、ロッド・スチュワートのヒット曲『セイリング』(”Sailing”)のイメージと重なる。
 セイリングといっても、若い世代はあまりピンとこないかもしれないが、一九七〇年代に大ヒットしたブリティッシュロックの傑作だ(インターネットの動画サイトなどでは歌詞の字幕付で視聴もできるようだ)。正確に言うと、オリジナルはサザランド・ブラザースというイギリスのデュオの曲で、数年後にロッド・スチュワートがカバーして世界的な大ヒットになった。
 歌詞は、世界を放浪していた男が最後に、船に乗って海を越え(1番)、鳥のように空を渡り(2番)、故国へ(あなたの元へ)帰る、というものだ。この「あなたの元へ」は、ラブソングであれば恋人か妻か、はたまた母親かとなるところだが、いきなり夜の闇に沈んで死にかけている「私の声が聞こえますか」という呼びかけに転じ、「おお神よ、あなたの元へ」となって終わる。
 歌詞は、世界を放浪していた男が最後に、船に乗って海を越え(1番)、鳥のように空を渡り(2番)、故国へ(あなたの元へ)帰る、というものだ。この「あなたの元へ」は、ラブソングであれば恋人か妻か、はたまた母親かとなるところだが、いきなり夜の闇に沈んで死にかけている「私の声が聞こえますか」という呼びかけに転じ、「おお神よ、あなたの元へ」となって終わる。
 男と女や母と子の心の絆を歌っているのかと思って聞いていると、最後になって神に救いを求める者の心の叫びだったとわかる仕掛けになっている。
 東洋の非キリスト教徒たる訳者にとっては意外な展開に思えたが、コールリッジの『老水夫行』を読んだとき、「ああ、このイメージだったのか」と納得したものである。
 この古典となったロマン主義の詩とポピューラソングの歌詞の共通性を論じた説は寡聞にして知らないので、これは訳者の勝手な思い込みにすぎないのかもしれない。とはいえ、帆船と吉兆を示す鳥、嵐というイメージは、それほどにも一般的なものとして定着しているということだ。
 とまあ、つい、こういう面倒くさい能書きを言いたくなる作品なのだが、細かいことは「あとがき」をご覧いただくとして、まずは全体を読んでみてほしい。
 現代の読者の琴線にふれるところが少しでもあれば幸いである(こういう表現もくどいね。ま、絶対に損はしないから、読んでみてください!)。
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映画 『きみがくれた未来』

スポーツに限らず、マイナーな趣味を持っていると、それに少しでも関連する本や映画があればとびつきたくなるものだ。<br />少々のアラがあっても、それが取り上げられたということだけで満足し、評価も甘くなる──私にとってそういうものの一つがヨットで、ヨットが登場する本や映画は、ついつい人に紹介して薦めたくなる。

というわけで、クリスマスシーズンの映画に、ヨットが単なる小道具ではなく登場するものがあるのでご紹介。

『きみがくれた未来』12月23日から東宝系で全国ロードショー

予告編を見るかぎり、ヨットのシーンのクオリティは高い印象を受ける。

映画のサイトはこちら(予告編が見られる)。
http://kimi-mirai.jp/

なお、映画の公開にあわせて11月25日に原作本の翻訳が出た(角川文庫)。

映画の公開は12月下旬なので、さっそく買って読んでみた。

内容は予告編とはかなり違っていて、なんとも評価がしにくい。

そもそも、予告編で目を引いたディンギーレースのシーンや主人公がヨットレースの成績がよくて大学進学が認めれたという設定自体が原作になく、映画向けのようである。

写真は左が原作(ペーパーバック)、右が日本語版(文庫)。

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ちなみに、翻訳では、ヨット用語に関して、例によって旧態依然とした帆船用語が使用されていて(一般の辞書にはそれしか載っていないことが多いのでやむをえないけれど)、アメリカズカップを船の名前と間違えるとか、ヨットの知識がないためにおかしな表現になっているところも多々あって、ヨットがマイナーな存在であることをあらためて感じさせてくれる。

たとえば、
1. 主帆、2. 三角帆、3. 大三角帆、4. 操舵室(席)、操縦席、5. 客室、船室、6. 調理場、7. 羅針盤、8. 甲板昇降階段、9. 波よけ板、10. 動索

ま、文字のイメージでだいたいの見当はつくけど、いまどきのヨット乗りはこんな言葉はまず口にしない。大三角帆とか羅針盤とか、重厚なクルージング艇ならともかく、セールはケブラー、マストはカーボンの単独世界一周レース用の38フィートのスループには、あれれって感じではある。

というわけで、ヨットに関連した個所にあまりにも「あれれ」という部分が多いので、内容を確認するため英語版を取り寄せて確認してみた。

(訳語: ヨットで一般に使用する名称  原文の英語)の順
1. 主帆: メンスル/メインセール  mainsail  三角帆: ジブ jib  3. 大三角帆: スピン/スピンネーカー  spinnaker   4. 操舵室(席)、操縦席:  コクピット cockpit   5. 船室、客室:  キャビン cabin   6. 羅針盤:  コンパス compass   7. 甲板昇降階段: コンパニオンウェイ  companionway   8. 波よけ板: 差し板  washboard   9. 調理場:  ギャレー  galley   10. 動索:  ハリヤード  halyard

間違っているわけではないが、こういう基本的な細部の表現に違和感を感じると物語に素直に入っていきにくい。

もっとも、こういう印象を持つのは、実際にこういう言葉を使っているヨット乗りだけかもしれない。ヨット用語はほとんどがカタカナなので、ヨットに乗らない人には右のカタカナよりは左の漢字の方が少なくとも何のことか検討がつけやすいと(編集サイドで)判断したのかもしれないと、好意的にみようとしてみたものの、誤訳もけっこうあって、推薦したいのに推薦できないという、このもどかしさ、、、

英語版と日本語版を突きあわせて確認する時間も気力もないので、和訳で「???」の部分について、原文と照合してみよう。

まず、重要な登場人物の一人(ヒロイン)で、ヨットでの単独世界一周レース出場を控えたテス・キャロルについての説明の部分(文庫版50ページ)。

(引用)
そして、<マーブルヘッダー号>と<アメリカズ・カップ>号の船長で、この世で誰よりも大三角帆の裁断に通じている、テッド・フッドを崇拝するようになったのだ。
(引用終)

原文ではこうだ。
She worshiped Ted Hood, a Marbleheader and America’s Cup skipper, who know about more about striking a curve on a spinnaker than anyone on earth.
(英語版37ページ)

「<マーブルヘッダー号>と<アメリカズ・カップ>号の船長」というのが間違い。
「マーブルヘッド出身で、アメリカズカップ(という伝統のある最高峰のレース)で艇長(スキッパー)をつとめた経験がある」という意味。

いまどきのヨット乗りで「大三角帆」といわれてすぐにわかる者はほとんどいまい。スピンとかスピンネーカーといえば、すぐに通じる。風船を半分に切ったような形でふくらませる、カラフルで大きなセールを指す。

ちなみに、テッド・フッドは実在の人物で、高名なヨット乗りであり、同名の有名なセールメーカーの創業者でもある。写真はアメリカズカップをめぐる物語をテーマにした『至高の銀杯』

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次はテスがメインセールを上げようとして、途中で引っかかったために誰かがマストに登らなければならなくなった場面で、巨漢のティンク・ウェザービーとの会話(文庫版51ページ)

(引用)
「帆に上がって、ようすを見たほうがいいわね」テスが言う。
「押し上げてやろうか?」太鼓腹を叩きながら、彼が答えた。
「あそこまで上がれる力の持ち主なんて、いないわよ」テスはロッカーのひとつに近づき、ふだんヨットの側面掃除などに使う、平板を紐で吊っただけの構造のボズウェインズチェアを引っ張りだして、別の帆の動索に固定し、平板部分にすわった。
(引用終)

ここは二つおかしなところがある(厳密には三つ)。

まず「帆に上がって」というのは、マストに登って原因を調べる必要があるという意味で、帆に上がるという行為はないので「(マストを)あそこまで上がって」くらいでよい。

ま、ここはそう目くじらをたてるところではないが、次にティンクの台詞とテスの二つ目の台詞がかみあっていない。原文を見ると
"better get up there to take a look", she said.
"Want to hoist me?" he said, patting his belly.
"Nobody’s that strong." She walked over to one of the lockers, pulled out the bowswain’s chair, fastened it to another halyard, and positioned herself on the wooden sheet.
(英語版72ページ)

ここは、訳文にあるようにティンクがテスを押し上げてやろうかといっているのではなく、自分がマストに上ろうか(自分が登るからウインチで引き上げてくれるかい)と言っているのである。それが、あんたみたいな大男を引き上げる力のある者はいない、というテスの返事につながるわけだ。

むろんティンク自身も自分は巨漢で、自分が登るよりは体重の軽いテスがマストに登って自分は補助にまわる方が現実的だと思っているし、テスもそのつもりでいることはお互いにわかってはいるのである。

とはいえ、タメ口をきいてはいても、いかんせん、テスは彼の上司(部下と社長)という間柄なので、自分から彼女にマストに登れとは言いにくい──という場面なのだ。

もう一つは「ヨットの側面掃除などに使う、平板を紐で吊っただけの構造のボズウェインズチェア」というところ。

親切にも原文にない「側面掃除などに使う」という表現を添えて説明してあるが、その説明自体が間違っているし、ボズウェインズチェアなんて言っても、誰もわからない。それをいうならボースンズチェアである。

もっとも、英語版のbowswain’s chairは作者のミスだろう。正確には boatswain’s chair、 略して bosun’s chair とか bos’n’s chairといい、マストに登る道具の一つで、構造は訳文の通り。ハリヤードにつないでウインチで引き上げる。ヨットでは使用頻度は少ないが、いざというときになくては困る必需品でもある。<br />ちなみに swain は若者とか色男のことで、 boatswain となると、船の種類によって甲板長とか掌帆長、ボースンとなる。

長くなったが、もう一つ。

(引用)
三十フィートの高さの海水の壁が操舵室に降りかかり、テスは索止めをやめ、大急ぎで命綱をつけた。凍てつくような海水にもまれ、忘却の彼方に引きこまれそうになりながら、必死に息を吸う。神様、ありがとう、ハーネスと "舳先から船尾に渡した紐" (ジャックライン)はびくともしていない。(文庫版72ページ)
(引用終)

原文はこうなっている。
A thirty-foot wall of water crashed into the cockpit, knocking Tess from her foot cleats and sweeping her into the lifelines. She grasped for air as the cold ocean wrapped itself around her, sucking her to the brink of oblivion, and then, thank God, her harness and jack line held fast.(英語版55ページ)

大波が降りかかって船から落ちそうになって間一髪助かった場面の描写だが、「テスは索止めをやめ、大急ぎで命綱をつけた」は、波で足をすくわれ、ライフラインのところまで押し流された、とするのが正しい。忘却の彼方というような詩的な表現ではなく、板子一枚下は地獄という、その海にあやうく落ちるところだったのである。

大急ぎで命綱をつけたのではなく、すでに命綱(ハーネスとテザー)をつけ、ジャックラインに止めていて、それが持ちこたえてくれたから助かったのである。

ここはライフラインを命綱と解釈したところに誤訳の根がある。

というのは、ライフラインは一般には命綱だし、訳者が自分の体と船を結びつけておくものを指すと理解したとしても無理はないが、ヨットでいうライフラインはそれとは違う。

ヨットでいうライフラインは、船の舷側に転落防止のためぐるっと張りめぐらせてあるステンレスワイヤを指す。体につけるものはハーネス、自分の体と船を結びつけておくのはテザー(と船側のジャックライン)で、原文ではテザーとライフラインは別のものとして書き分けてあるのに、訳者はライフラインをテザーの別称くらいに思って無理につじつまをあわせようとして失敗している。

ヨットのライフライン、ハーネス、テザーを写真で示しておく。

被写体は逍遥と筆者だが、人様にお見せできるようなものでもないので首から上はカット ^^;)

Tether_2

右の舷側に平行に張ってある二本の白く見える水平の線(白のビニールコーティングしたステンレスワイヤ)がライフライン、上体につけている黒いものがハーネス、青い平織り(テープ状)の紐がテザー。右手に持っている黄色のものは甲板(デッキ)に這わせたジャックラインにテザーをつなぐ金具。

もう一つ、好意的に理解しようとしてもできない誤訳の例。

(引用)
口いっぱいに海水を飲み、テスは咳きこんだ。そして舵から手を離した。(文庫72~73ページ)
(引用終)

原文はこうなっている。
Tess coughed up a mouthful of seawater, then pulled herlself back to the wheel.
(英語版55ページ)

「舵から手を離した」というのはまったく逆で、大波をかぶってあやうく落水しそうになり、海水を飲んで咳きこんだものの、なんとかコクピットに戻って舵を握った、というのが正解。

べつに訳者や出版社に恨みがあるわけではないし、あらさがしをしたいわけでもないので、これくらいにしておくが、スピリチュアルやファンタジーが好きな人は本を読んでも楽しめるだろうが、ヨットというキーワードに引かれた人は映画だけにしておいたほうがよさそうである。

『きみがくれた未来』ベン・シャーウッド著 尾之上浩司訳 角川文庫 平成22年11月25日初版発行
"The Death and Life of Charlies ST. Cloud" by Ben Sherwood, Picador, 2010, ISBN 978-0-330-52028-7

[2010/12/05]