ブレグジットとジブラルタルと領土問題

イギリスが欧州連合(EU)から離脱する期限(2019年3月末)が迫っていますが、イギリス国内では離脱の方法をめぐって意見が分かれ、EUとの関係でもまだ重要な問題が未解決のままです。
    
おまけに、このところの悲観的な経済予測に後押しされて、再度国民投票をという主張も根強くなってきていて、なかなか着地点が見えませんね。

日本ではあまり報道されていませんが(というより、日本経済に直接の関係がないのでほとんど報道もなされていませんが)、イベリア半島(スペイン)先端のジブラルタルの帰属も、イギリスとEU(=スペイン)との間で異論が生じている火種の一つです。

ジブラルタルがイギリスの植民地として認められたのは1713年のユトレヒト条約ですから、二百年も前のことです。

ジブラルタルは、大きさでいうと、神奈川・三浦半島の先っぽ(油壺から先の部分)程度しかなくて、面積も6.5平方キロ(南北5キロ、東西1.2キロ)と、限定された狭い地域なのですが、

イギリスは、自国の領土だとして共にEU離脱を主張し、
スペインは、占領された植民地だとして返還を求め、
住民は、イギリス帰属を支持しながらもEUからの離脱には反対、、、

といった状況です。

ちなみに、ジブラルタル海峡の一番狭いところはわずか14キロほど、
東京湾アクアラインの長さはトンネルと橋を合わせて15キロほどです。

東京湾の湾口の幅は約20キロ、一番狭い浦賀水道で幅10キロほどとされているので、ヨーロッパとアフリカという二つの大陸が、東京湾を挟んだ神奈川と千葉みたいな距離にあると考えればわかりやすいでしょうか。

ジブラルタルは地中海から大西洋への出口に楔(くさび)を打ち込むように突き出ていて、ここを押さえれば地中海を含めた制海権を手中にできる可能性があるため、古代から海上交通の要衝として、激しい争奪戦が繰り返されてきた土地でもあります。

昨年(2018年)11月にイギリスとスペインの間で、とりあえず現状維持ということで暫定協定が締結されましたが、あくまでも暫定なので、2年間の猶予期間が経過したあとは論争の再燃は必至、、、

国際問題で一番の難問は、領土問題でしょうね。

日本の戦国時代の国のぶん取り合戦のように、欧州も領土を取ったり取られたりで、これまで国境線もめまぐるしく変わっています。スイスの公用語が4つ、ベルギーは3つあるように、複数の公用語があるところが珍しくないことも、それを示しています。

で、この領土や国境を論じ始めると収拾がつかなくなるので、とりあえず第二次世界大戦終了時の国境で凍結して、余計なことはいわないようにしようとしてまとまったのが、現在の欧州連合です。大人の対応ということでしょうか。

領土問題に手をつけると、パンドラの箱を開けるみたいに、欧州の共同体などあっというまに空中分解してしまいかねませんからね。

半世紀ほど前の1969年、西側と敵対する同じ社会主義国同士の旧ソ連と中国の間で中ソ国境紛争が起こりましたが、その紛争の対象になった領土というのが、国境と決めていたアムール川にできた中洲をどちらの所有にするかということでした。

で、その土地の経済的価値に到底見合わない軍事費や損害を出してまで互いに自分の主張を通そうとするわけです。

領土問題となるとその瞬間に熱烈な愛国者になって、声高に勇ましいことを叫び始めるひとが多いのは、どこの国も同じです。

日本はロシア、中国、韓国との間で領土問題を抱えていますが、ロシアも中国も韓国も、それとは別の領土問題をそれぞれ抱えていて、こっちで妥協すれば、あっちでも妥協せざるをえなくなるということで、互いに一歩も引かず、にらみあったまま時間だけが過ぎていきます。

イギリスはアルゼンチンとの間でフォークラランド諸島の帰属をめぐって1982年に戦争を起こしていますが、今回も、スペインへの武力行使も辞さないと拳をふりあげているおバカな国会議員がいたりもしています。